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200年愛されてきたピアノの曲


初めてこの曲を聞いたときはぶったまげました。なんだこの内省的でドラマティックで美構成な曲は。自分はロック・ポップスにどっぷりで、クラシックは興味本位で聴いてもいまいちハマることができなかったのですがこの30番には出だしの数秒でガッチリ心を掴まれてしまいました。ポツポツと話をするかのような出だしと抑揚のある展開。激しいパートでも上品さを決して失わない和音の構成、どれを取っても最高です。


クラシックの古典派と呼ばれる時代の音楽はキリスト教がベースにあり、貴族のための嗜好品として作曲家から提供されるものでした。なので楽曲に作曲家自身の感情を込めることは(少なくとも表向きは)無かったようです。古典派の終わりのほうに登場したベートーヴェンはそれに反発し、「音楽とは芸術である。芸術は身分とは関係ない」として、音楽を芸術としてそれまでより一歩押し進めた作曲家でした。

そのためかわかりませんがこの曲には他者(神とか貴族)は存在せず、自分の内側を見つめそこからメロディを掬い取ったかのようです。それが200年ものあいだ愛され、ポップスに慣れ親しんだ人間の心にも届く理由かもしれません。時代が違っても人間は変わらないということでしょうか。

クラシックにはグレン・グールドという有名なピアニストがいて、その人の30番の演奏を聴きましたがこれはあまりハマりませんでした。スピードが速すぎて自分の好きな叙情性が感じられなかったというか。でも音の粒が揃っていて、この曲のハーモニーや構成の美しさがよくわかる演奏でした。グールドという人はバッハが好きで、音楽の構造から生まれる美を重視していた(wikipediaから引用)そうなので、さもありなんって感じですかね。


いやあ、やっぱりこの曲はすばらしいよ。続けて発表された31番と32番も素晴らしい。ベートーヴェンピアノソナタは「ピアノソナタ新約聖書」と呼ばれるそうです。全部聴いたわけではないですが、そのなかでもやっぱり30~32のいわゆる「後期ピアノソナタ」は内省的で違う空気を持っていて、僕は断然好きですね。

これ聴きながらお酒とか嗜んだら最高じゃないですかね。そういう用法はジャズとかが一般的なように思いますし僕もそういうイメージでしたけど、これからは「ベートーヴェンピアノソナタを聞きながらウィスキーを嗜む」これでいきましょう。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番、31番、32番

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番、31番、32番