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宮崎駿監督 これまでの引退関連の発言

宮崎駿監督、「長編作品引退」が発表されましたね。ベネチア国際映画祭の会見中のジブリの星野社長による発表です。6日には宮崎監督自身による会見が都内で行われるそうです。

ネットでは「何度目の引退宣言だ」とか言われてましたが、確かに僕も宮崎監督の引退宣言は過去に聞いた覚えがあります。しかしここまで正式な発表は初めてなので、今回はおそらく本気なのでしょう。

宮崎監督作品への僕の熱い思いは置いておくとして、インタビュー集「折り返し点」をざっと見て引退に関連する項目を少し抜粋して、散々ツッコまれているこれまでの引退の経緯や意図を探ってみましょうか。

折り返し点―1997~2008

折り返し点―1997~2008

もののけ姫』公開時、流れは覚えてませんが確かに「宮崎駿が引退」だとテレビで騒がれてたように思います。自分は当時はそこまでジブリに興味が無かったので「ふーん」くらいの感想でしたが、それでも覚えているんですから結構「引退報道」がされてたんじゃないでしょうか?

以下はもののけ姫公開後のインタビューからの抜粋です。(「折り返し点」112-113ページ)

-- 『もののけ姫』が監督最後の作品だと言われていますが。

宮崎 僕はもともとアニメーターで、アニメーターが、演出・監督をやっていたわけです。でももうアニメーターであることが無理になったんです。そういう意味ではアニメーターであることの最後の作品です。

-- 今後,何か新しいプロジェクトは考えてらっしゃいますか?

宮崎 考えていますけど、自分の体力と相談しながら「お前、まだ出来るのか?」って自分に聞かなきゃならないですからね。でも歳をとればとるほど、本当はどんどん出来なくなっていくはずなのに、どんどんやりたくなる(笑)。そういうことに気をつけようとは思っています。

宮崎監督は肩書きは監督ですが、昔から「自分は絵を書くアニメーターである」という姿勢を貫いていました。自分で絵を書き、汗をかいて労働することを美徳とする姿勢からくるものだと思いますが、そのやり方が体力的に難しくなってきた、と言っています。しかし気力はみなぎってますね。『もののけ姫』は97年公開、宮崎監督56歳の作品です。

続いて「折り返し点」150ページより、これも『もののけ姫』公開時のコラムから抜粋

僕らはリレーをやってるんです。誰かからバトンをもらった。

(中略)アニメーターが演出をやる仕事としては『もののけ姫』が最後です。僕はもう現場では描けない。そういう体力が残っていないんです。そうすると、いや応なく別の形でやらざるをえない。むしろ、自分が描けなくなったんだからこそ、レベルは高くなって欲しいじゃないですか。

僕にとっては、次、何をつくるかなんです。それができたら、『もののけ姫』よりもっと遠くまで行けるなと思うんです。

やはり「アニメーターとしての仕事はもう出来ない」という意味での最後と言ってますね。そして後継を育てるということでしょうか?アニメーターとしては引退するが、その領域を次の世代に渡して自身は監督として『もののけ姫』の次を作る。そういう意味に取れます。しかしその後、後継については納得がいかないようでスタッフから上がってきた絵に自分で手を加えていくという、アニメーター作業が16年後の現在まで続きます・・・


続いて『千と千尋の神隠し』完成報告記者会見から抜粋。「折り返し点」243ページより

宮崎 四年程前に引退すると言った人間がまた出てきまして…

254ページ

-- 前回は引退宣言がありましたが、今後の予定をお伺いしたいと思います。

宮崎 長編はほんとにもう無理ですね、体力的に。無理だと思っていてやれたから、ほんとに幸せだと思ってますけれども。

(中略)

だから、映画もやるのやらないのというよりも、短いものとかやりたいものがあればやればいいんで。でもその辺をはっきりするのは監督だから、それはほんとにみんなに迷惑がかかるんだけど。今回は今のセクションのチーフたちがほんとによくやってくれて頑張ってくれてカバーしてくれましたが、この次はもっともめてるだろうと、我ながら思っております。

「ほんとにもう無理」という発言で引退示唆とも取れますが、話の流れ的に単なるボヤきなんだろうなと思います。「この次はもっともめてると思う」とも言ってるので、多分やめるつもり無かったでしょうね。「もう無理」とはあくまでボヤキと取れます。

 


ハウルの動く城』公開、第六十二回ベネチア国際映画祭の記者懇談会から抜粋。「折り返し点」379ページ

-- 長編アニメを作るのは、心身ともにたいへん疲労する作業だと思います。これまで『もののけ姫』の後に引退宣言が出たこともありましたがが、今はどういうご心境でしょうか?

宮崎 やっぱり引退するんだったら『もののけ』の後でしたね。そうすればいろんなことを新しく始められたと思うんです。(笑)。第二の人生はなるべく早く始めなきゃ駄目です。リタイアのチャンスはあの時だったな。

-- ジブリも大きくなって、続けていくことになったのでしょうか?

宮崎 いや、一番大きな理由は、「もうちょっとやってみたい」というスケベ根性が自分にあったからですよね。あの時はヘロヘロだったから、「本当にこれでもう終わりだ」と思ったし、「こんなもの、絶対にお客は入らないから、もう二度と作るチャンスは来ないだろう。だから、もう全部使ってしまえ」という感じでやった結果が、お客さんが入っちゃったもんだから、次のチャンスが産まれたということだと思います。あのとき、ジブリが潰れても仕方ないところまで使っちゃいましたよね、人もお金も。人を使ったのは大きかったです。こんな酷なことをアニメーターに要求するもんじゃないということを随分要求しましたから。鈴木(敏夫)プロデューサーも言いましたからね。「宮さん、こんなに金をかけられるのは最後ですよ」って(笑)。「これは絶対お客は入らないだろう」という覚悟で作った映画でしたから、リタイアせざるを得ないだろうし、もう次のことを考えるのは不遜な行為だと思ってましたから。それは嘘じゃないんです。

-- でもやっぱり、やりたい企画は湧いてくるものなんですか?

宮崎 映画監督ってね、一回なると、ずっと映画監督なんですよ。「前映画監督」とか「元映画監督」とかないでしょう?煩悩がいや増す仕事でね、映画監督なんか何年やったって、ちっとも立派な人間にはならないと、僕は思います。煩悩がますます深く仕事だと(笑)。八十になっても九十になっても、煩悩だけは変わらないんですよ。

この会見のやりとりでは気力がみなぎっているように感じますね。『もののけ姫』の製作時は色々なタイミングが重なって、スタジオジブリの技術的にも集められる資金的にもピークだった、こんなチャンスはもう二度とない、やりきろう、凄いものを作ろう、とそういう意気込みがあったそうです。若干うろ覚えですが・・・鈴木敏夫プロデューサーの「仕事道楽」にそのようなことが書いてました。

仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)

仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)

もののけ姫』をやりきった後は本当に、抜け殻のようになっていた。アニメーターとしてはこれ以上はできない、そういう状態だった。それは間違いないようです。しかしやりたいものはある限りは作り続けると、『ハウル』公開時は腹括ってる感ありますね。そしてドキュメンタリーなどからアニメーターとしての作業も結局続いてることがわかります。


最後に現在発売中のCut No.327(2013年9月号)から、渋谷陽一氏によるインタビューの抜粋。

-- (略)この映画を見たときの僕の最初の感想は、「ああ、宮崎さんは第二のデビュー作を作ったんだなあ」という。

宮崎 デビューなんかしてませんよ。あたしゃ幕引くためにやってるんですから

(中略)

-- 宮崎さん、『ポニョ』を作った時に、これが最後だとおっしゃってましたよね。

宮崎 うん、まあ、毎回最後だと思ってるんですけど。僕は『もののけ姫』の時も最後だとおもったし、もう毎回最後だと思うんだけど、今回はねえ、ちょっと違うんじゃないかと自分では思ってますけど。そんなこと言い張ってもどうせ信用しないから、言わないですけど

(中略)

宮崎 まあ、やるかやらないかとかっていうことではないと思ってますけどね。でも、僕はちゃんと1回、幕を引かなきゃならないと思ってますよ。みっともないですよ、やったら

-- なーに言ってんですか。

宮崎 特にやっぱりね,アニメーションは眼を使うから、細かいものを描くという意味でもね、ほんとに限界がきたというのはよくわかるんですよ。

うーん、このほかにも腰痛があるなど体の不調を訴えたりしてますが・・・なんかこれまでとあまり変わらないような感じしますね。実はこのブログ記事は「正式な発表もあったし、これまでとは違うんだよ!本当に宮崎監督は引退してしまうんだ!ガガーン」みたいな結びにするつもりだったんですが、宮崎監督のスタンス的にはこれまでの延長上として、「作りたいけど、もう体力的に無理だわー」と言ってたのを、ケジメとして正式発表した、という感じに見れる。

確かに会社として引退を発表した。けど「長編作品からの引退」という言い方も気になるし、1時間程度の作品はこれからも作るのかもしれない。無理はしないで欲しいが・・・


とりあえず6日の会見待ちかなあ。そこで何か新情報があるかもしれないけど、これまでどおり「体力の限界」ということなら、『もののけ姫』から言い続けてた作画などの実作業から手を引くくらいの意味かもしれない。そしてこれからも何らかの形で作品を発表してくれるのを期待していいのかもしれない。

しかし引退報道、茶化されてるなあ・・・。とはいえ宮崎監督も悪いと僕は思っていて、割とヒロイックな発言をする人だなあという印象があるんですよね。大げさに、何事も0か100か、生か死か、みたいなドラスティックな言葉を使いたがる印象。映画監督として無意識に「演出」してるのかもしれないし、深い知識や思考の裏返しなのかもしれないけど、そこをマスコミとかに上手く使われるんだなあと思ったりします。いや、もしかしたら鈴木Pが「宮さん、そんなに細かく話しても伝わらないよ、もっと大きくズバっと言わなきゃ」といってドラスティックな発言を誘導してるのかも・・・いやうがちすぎだな、うん。